最大化6

そうやって経験の価値を再認識したときに、

もう一つ大切だなと感じるのは、

他者の経験について。






自分が自分なりの経験をしているように、

他者は他者なりの経験をしている。






文字で書いてみるとごく当たり前のように見えるけれど、

「自分の経験」にようやく自覚的になって間もない身としては、

ややあって「他者の経験」に自覚的になり始めたとき、

今までの自らの振る舞いを顧みて、

とても当たり前とは言えない、

さまざまな感情が去来した。









他者の経験との関わりにおいて、

「ゆるやかな影響作用が生じる」くらいであれば、

時と場合によっては許容範囲かもしれない。




ただそれが、

「他者の選択権の侵害」にまで到るのであれば、

すぐさまバイオレーションのホイッスルが鳴っても仕方ない。









ヤマアラシの針毛は、

決して不自由さをもたらすジャマモノなんかではなく、

必要なときにいつでもホイッスルの代わりを務めてくれる、

大切なシグナルなんだと。









針毛で過去に負った傷は、

時が経つにつれて癒えていく。






それでも残った傷跡は、

大切にしまって生きていく。