表現技術の進化は、
たとえそれが50年前の映画であっても、
現代の受け手にビビッドに伝わるよう、
あれやこれやを可能にしている。
あらためてそう思わされたのが、
映画「百年の夢」。

共産主義下のスロバキアで、
我が家よりもさらにド田舎であろう山岳地帯に暮らす、
何人もの老人たちにマイクを向けた作品。
今の世間一般目線だとなんて不幸なんだと見られそうな境遇の人々も、
むしろ今の世間一般の少なからぬ人々が醸し出す「暗さ」無しに、
ただ自分のありのままをカメラに向かって素直に伝える。
その目のまあ強いこと強いこと。
そして澄んでる。
フライヤーのキャッチコピーには顔、顔、顔とあったけど、
観終えて印象に残ったのは、目、目、目という感じ。
思うようにならない外的な不自由さから独立して存在する、
広大な内なる自由。
この作品が完成から16年間輸出禁止になっていたのは、
その「自由」さが滲み出ているからなのかもしれない。