立川談志さんの噺で、
特急に乗り込んだおばあさんが特急料金を払うよう求められた際、
「なんで鈍行より短い時間しか乗らないのに高い料金を払うんだ、
短時間しか乗らないのだからむしろ料金をまけろ」
というのがあった。
上田から大阪へ電車で行くときに、
東京回りの新幹線の方が早いにもかかわらず、
長野から名古屋まで「しなの」で移動している最中に、
ふとそれを思い出した。

長野を発って名古屋まで、
ちょうど3時間。
10月に名古屋へ向かって左側に座った時には姨捨の棚田を、
今回右側に座ったら木曽川を、
それぞれゆったりと眺められた。
一方、「のぞみ」で隣の席に座り、
ずーーーっとパソコンとにらめっこして仕事をしていた同年代の女性も、
とても印象的だった。
彼女のようなハードワーカーが、
もしかしたら乗り換えの待ち時間などに、
こういう設備を喜んで使うのかもしれない。
昔の自分もそうだったかもしれないな、と。
速さやゆとり度合いといった軸についてどの程度を求めても、
それなりに実現してくれる選択肢がそろっている今の時代は、
望んだ経験がしやすいという意味で、
恵まれているのかもしれない。
